ヨウラクユリ(瓔珞百合、学名:Fritillaria imperialis)は、ユリ科バイモ属の植物。別名はフリチラリア、フリチラリア・インペリアリス、オウカンユリ(王冠百合)。
特徴
クロユリやアミガサユリ(バイモ)と同じバイモ属の植物で、バイモ属はユーラシア大陸から日本列島、北アメリカ大陸に至るまで約80種があり多くの種が観賞用植物として栽培されている。ヨウラクユリもその1種である。
球根性の多年草で、高さは60 cmから1 mに達する。茎は肉質で下方に光沢のある葉を何段かに分けて付け、茎の先端に多くの葉と花を付ける。葉は幅2.5 cmほどで平滑である。
鐘形の花は直径4 - 5 cmで散形花序となり、色は黄色、黄褐色、レンガ赤色、えび茶色、濃紅色、橙赤色などで、園芸用品種としては多様な色がある。7 - 8個の花がかたまって咲く。(20個ほど花を付けるものもある。)美麗な花であるが有毒である。花被は6つで卵形または長楕円形、長さは3.5 - 5 cmほどで内側基部は黒いが、白くて大きい蜜腺が目立つ。おしべは花被より長く6本ある。
黄色味を帯びた鱗茎は縦断すると、中から芽を持った同じような鱗茎が出てくる。鱗茎は鱗片葉の葉腋に新たな鱗茎を作りながら新個体を形成する。染色体数は2n=24で、1 - 12の過剰染色体を持つ。なお鱗茎は食用とすることができるが、悪臭を持つ。
品種に銅紅色のオーロラ、紅色のマキシマ・ルブラ、黄褐色のオレンジ・ブリリアント、黄色のマキシマ・ルテアなどがある。
名称
和名のヨウラクユリは、下垂した花を釣り鐘型をした仏具の飾りの瓔珞(ようらく)にたとえたものである。種小名のインペリアリス(imperialis)は「帝王の」の意で、バイモ属で最も優れていることを意味する。
ヨウラクユリ、フリチラリアともにバイモ属の総称としても使用される。
分布
小アジアからインドにかけて(西アジアからパキスタンにかけて)が原産地である。自生地はイラン、アフガニスタン、トルコ、西ヒマラヤ、インド。自生種の鱗茎は地中深くに存在する。
栽培と文化
ロックガーデンには適せず、花壇に植えるか切り花にするのに向いている。球根を植える際は深めに植え、排水性・保水性に優れた有機質を含む土に植えるとよい。耐寒性に優れるが、強い光、高温、乾燥に弱く、半日蔭で育てるのが良いが、光が弱すぎると着花や球根肥大が悪くなる。球根以外に鱗片繁殖も可能である。
さび病やウイルス病が発生することがある。
ヨーロッパでは古くから観賞用植物として栽培されてきた。ヒマラヤからイスラム圏を経て中世の末に南ヨーロッパへ入り、ルネサンス期に北ヨーロッパまで広がった。例えば、ウィーンには1576年に「ペルシアン・リリー」として伝えられた。ヨーロッパでの繁殖能率はあまり高くない。
ヨーロッパに伝来して以降、貴重な園芸品種として愛好され、フィンセント・ファン・ゴッホをはじめとして多くの画家が描いている。5月4日の誕生花とされ、花言葉は「天上の愛」。
日本における栽培
日本での栽培は難しく、何度か輸入されているものの繁殖能率はあまり高くない。「趣味の園芸」による栽培難易度は5段階中4である。
日本には1872年(明治5年)から1873年(明治6年)にかけて伝来した。早春に咲く花として評価されており、秋に球根を植えると、4月中旬から下旬に開花する。ただし開花まで4 - 5年を要する。6 - 7月になると地上部が枯れて休眠する。3 - 4年であれば植え放しもできるが、夏季に地温が高くなりすぎる地域(関東地方以西の平坦地)では球根を取り出して冷暗所に保存し、秋に植え直す。
脚注
参考文献
- 坂西義洋 著「インペリアリス」、阿部定夫・岡田正順・小西国義・樋口春三 編『花卉園芸の事典』朝倉書店、1986年10月25日、313頁。ISBN 4-254-41006-9。
- 塚本洋太郎『原色園芸植物図鑑〔IV〕』保育社〈改訂2版〉、1973年8月15日、226頁。 全国書誌番号:89020299
- F.A.ノバク『世界の植物百科』印東弘玄 監修、岩崎書店、1967年11月15日、594頁。 全国書誌番号:67009854
- 宮沢文吾『観賞植物図説』養賢堂〈2版〉、1963年1月5日、912頁。 全国書誌番号:61002865
- 週刊百科編集部 編『朝日百科 植物の世界 10 種子植物 単双子葉類2』朝日新聞社、1997年10月1日、320頁。ISBN 4-02-380010-4。
- 主婦の友社 編『新装版 誕生花と幸せの花言葉366日』主婦の友社、2016年9月16日、207頁。ISBN 978-4-07-417823-0。
- 日外アソシエーツ株式会社 編『植物別名事典』日外アソシエーツ株式会社、2016年8月25日、604頁。ISBN 978-4-8169-2621-1。
- 堀田満・緒方健・新田あや・星川清親・柳宗民・山崎耕宇 編 編『世界有用植物事典』平凡社、1989年8月25日、1499頁。ISBN 4-582-11505-5。
- 塚本洋太郎 監修 編『原色花卉園芸大事典』養賢堂、1984年12月10日、863頁。 全国書誌番号:85027495
- 林弥栄・古里和夫 監修 編『原色世界植物大圖鑑』北隆館、1986年4月20日、902頁。 全国書誌番号:87051214
- 本田政次・林弥栄・古里和夫 監修 編『原色園芸植物大圖鑑』北隆館、1984年5月20日、862頁。 全国書誌番号:85015870
外部リンク
- ブリタニカ国際大百科事典ほか『フリティラリア』 - コトバンク



