短頭症(たんとうしょう、英:brachycephaly)とは、前後径が幅に比較して短い状態のこと。後頭部扁平を併発することが多い。

「後頭部扁平」との関係

後頭部扁平(こうとうぶへんぺい、英:flat occiput)とは、後頭部の曲率半径が減少している状態のこと。俗に「絶壁頭(ぜっぺきあたま、英:flat head)」と呼称される。 上述した通り、短頭症は後頭部扁平を併発することが多いため、短頭症と後頭部扁平とは区別されないことがある。日本でも、後頭部扁平を指して短頭症と称することが多い。ただし、両者は区別すべきだとされる。

沿革

欧米と日本では、沿革に大きな違いがある。

欧米

欧米では、うつ伏せ寝が乳幼児突然死症候群の危険因子であることが判明したため、うつ伏せ寝の文化から仰向け寝の文化へと一大転換が図られた。しかし、その結果として乳幼児の頭蓋変形が飛躍的に増加し、頭蓋変形に対する医学的な研究が発展するとともに社会的な意識も高まった。そこで、「頭の形は親の責任(plagiocephaly is the parents' fault)」という考え方が広まりつつある。

日本

他方、日本では、そもそも仰向け寝の文化であったことに加えて、下記のような誤解が蔓延しているため、頭蓋変形に対する意識が高まらず、現在に至っている。

  • 「頭の形は遺伝で決まる」という誤解
  • 「頭の歪みは自然に治る」という誤解
  • 「いびつ頭は健康に影響しない」という誤解

種類

骨癒合性短頭症

骨癒合性短頭症(こつゆごうせいたんとうしょう)とは、乳幼児の両側の冠状縫合が早期癒合することによって起こる短頭症のこと。頭蓋骨縫合早期癒合症の1種である。

頭位性短頭症(変形性短頭症)

頭位性短頭症(とういせいたんとうしょう)または変形性短頭症(へんけいせいたんとうしょう)とは、仰向け寝などの外圧により乳幼児の頭蓋が変形することによって起こる短頭症のこと。位置的頭蓋変形症の1種である。骨癒合性短頭症との対比において「非骨癒合性短頭症(ひこつゆごうせいたんとうしょう)」と呼称されることもある。

疫学

日本

日本では、調査・研究されてはいないため、不明である。ただ、日本は欧米ほど頭蓋変形に対する意識が高くないため、欧米よりも多いと考えられる。

アメリカ

アメリカでは、1歳未満の乳児の16~48%に位置的頭蓋変形がみられた。

診断

まずは、頭蓋骨縫合早期癒合症の診断を行う。

頭蓋変形に該当するかどうかは、頭長幅指数(英:cephalic index)によって診断する。

原因

頭位性短頭症は、胎児期や乳児期に頭蓋へ外圧が加えられることによって発症する。

出生前

  • 骨盤位(いわゆる逆子)
  • 横位
  • 多胎
  • 児童の骨盤腔内への早期下降

出生時

  • 産道を通る際の外圧
  • 鉗子分娩
  • 吸引分娩

出生後

  • 仰向け寝
  • 向き癖
  • ベビーカーやベビーシート
    そのため、ベビーカーやベビーシートに乗せる時間を減らすよう勧告されており、代わりに抱っこ紐が推奨されている。どうしてもベビーカーやベビーシートに乗せるのであれば、巻いたタオルや枕を使うことが望ましい。
  • 頭部の打撲

健康への影響

発達遅滞

発達遅滞(英:developmental delay)を生じさせる可能性がある。厚生労働省の医療ニーズの高い医療機器等の早期導入に関する検討会においても以下のように記載されている。

頭痛

頭痛を発症する可能性がある。

乱視

乱視を発症する可能性がある。

顎関節症

顎関節症(英:Temporomandibular joint disorder)を発症する可能性がある。

斜頸

二次的斜頸(英:Torticollis)を発症する可能性がある。

脊柱側彎症

脊柱側彎症(英:Scoliosis)を発症する可能性がある。

外見への影響 

顔面変形

位置的頭蓋変形症は顔面変形を伴うので、『位置的頭蓋顔面変形症』と呼称されることもある。

歯列異常

歯列異常を発症する可能性がある。

日常生活への影響

自転車用のヘルメットが合わなかったり、眼鏡が斜めになる。

予防

頭位性短頭症には、以下のような予防法がある。

タミータイム

タミータイム(英:tummy time)とは、乳幼児が起きているときに、保護者などの厳重な監督のもとで、乳幼児を腹ばいにして過ごさせる方法のこと。

体位変換法(リポジショニング)

体位変換法(英:repositioning)とは、乳幼児の頭の同じ位置ばかりが下に来ないように、乳幼児の体位を変える方法のこと。 治療法としても有効である。

治療

どちらの短頭症も治療が必要である。厚生労働省の医療ニーズの高い医療機器等の早期導入に関する検討会においても以下のように記載されている。

外科治療

骨癒合性短頭症は、外科治療を行うのが一般的である。

ヘルメット治療

頭位性短頭症は、頭蓋形状矯正ヘルメットによって矯正治療を行うのが一般的である。治療できるのは定頸する生後3カ月から大泉門が閉鎖する生後18カ月までとされている。至適開始時期については、生後5~6カ月といわれている。治療開始後に、医師が主導となって健診やヘルメット調整を行う場合と、技師(義肢装具士)が主導となってヘルメット調整を行う場合とに分かれる。 国産第一号:アイメット(Aimet)、大学病院取扱数国内一位:クルム(Qurum)などがある。

骨癒合性短頭症でも、術後にヘルメット治療を行う場合がある。

ヘルメット治療については、厚生労働省の医療ニーズの高い医療機器等の早期導入に関する検討会において以下のように記載されている。

日本で流通しているヘルメットは以下の通り。

  • アイメット(英: Aimet)
  • クルム (英: Qurum)
  • ベビーバンド(英:babyband)
  • スターバンド(英:STARband)
  • ミシガン頭蓋形状矯正ヘルメット(ミシガン大学式頭蓋形状誘導ヘルメット、英:Michigan Cranial Reshaping Orthosis)

註釈

関連項目

  • 絶壁頭
  • 頭蓋骨縫合早期癒合症
  • 位置的頭蓋変形症
  • 斜頭症
  • 長頭症

外部リンク

海外のサイト

  • “Prevention and Management of Positional Skull Deformities in Infants” - AAP Gateway
  • “Flat Head Syndrome & Your Baby: Information about Positional Skull Deformities” - healthychildren.org
  • “Guidelines for the Management of Patients With Positional Plagiocephaly” - The Congress of Neurological Surgeons
  • “Positional Plagiocephaly” - American Association of Neurological Surgeons
  • “Plagiocephaly and brachycephaly (flat head syndrome)” - NHS choices

国内のサイト

  • 【ヘルメット治療】赤ちゃんの頭の形を治す矯正ヘルメット【全国の病院】

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