絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約第十一条3 (a) の改正(ぜつめつのおそれのあるやせいどうしょくぶつのしゅのこくさいとりひきにかんするじょうやくだい11じょう3 (a) のかいせい)は、1979年(昭和54年)6月22日にドイツ連邦共和国(西ドイツ)ノルトライン=ヴェストファーレン州ボンにおいて採択された多国間条約。絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約の下で招集される締約国会議の権限に財政規則の採択を追加することとしたもの。1987年(昭和62年)4月13日に発効した。

沿革

絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約は、1973年3月3日にアメリカ合衆国コロンビア特別区(ワシントンD.C.)において採択された多国間条約である。同条約は、主に野生動植物の国際取引の規制を通じてこれら動植物の種を保護することを目的としており、1975年7月1日から発効しているものである。同条約第12条では、同条約の事務局の役務を国際連合環境計画 (UNEP) 事務局長が提供することとされている。国際連合環境計画は、1972年6月に開催された国際連合人間環境会議の提案を受け、当該会議で採択された人間環境宣言及び環境国際行動計画を実施に移すための機関として、同年の国際連合総会決議に基づき設立された、国際連合総会の補助機関の一つである。国際連合環境計画は、既存の国際連合の諸機関が行う環境に関する諸活動を総合的に調整するとともに、これら機関が着手していない環境問題に関して国際協力を推進していくことを目的としている。国際連合環境計画は、同条の規定に基づき、同条約の事務局の役務を提供するとともに、当該事務局の運営経費及び締約国会議の会合の開催に必要な費用を国際連合環境計画が管理する環境基金から拠出してきた。しかし環境基金の目的上、当該費用に充てる資金を当該基金から無期限に拠出されることは、同条約の適切な実施のためには適切な手段が不可欠である旨を1977年5月25日の86C(V)文書で決定していること、今後締約国が増加する見込みがあること、来年に第2回締約国会議がコスタリカで開催されることの3点を踏まえれば、国際連合環境計画の触媒的な役割 (catalytic role) から矛盾すると認識された。国際連合環境計画は、1978年に開催された国際連合環境計画第6回管理理事会の決定において、1983年をもって環境基金からの拠出を打ち切ることとした。これにより、1984年以降における当該費用については別途締約国間の合意に基づき決定する必要が生じたが、同条約には締約国間の財政的負担に関する規定が存在せず、当該規定を整備するためには同条約を改正する必要があった。

このため絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約の締約国は、1979年6月22日に、ドイツ連邦共和国ノルトライン=ヴェストファーレン州ボンにおいて締約国会議の特別会合を開催し、同条約の事務局の経費等を締約国が負担することを可能とするため、同条約の改正を旨とする本条約を採択した。本条約は、その採択された日に同条約の締約国であった50ヶ国のうち34ヶ国(3分の2)が受託書を寄託政府であるスイス連邦政府に寄託した日後60日後に発効されることとなったが、環境基金からの資金拠出が打ち切られた1984年においても発効の条件を満たすことができなかった。絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約の事務局は、1984年と1986年の2回にわたり、本条約の重要性・必要性を各締約国に訴え、本条約を受諾するよう各締約国に外交文書を発出した。こうした工作の結果、1987年4月13日に効力を生じることとなった。また、これにより本条約は、発効以後に絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約の締約国となった全ての国に自動的に適用されることとなった。

現在、本条約の締約国は、絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約の締約国183ヶ国中次の149ヶ国である。

絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約の締約国のうち本条約に締約していない次の34ヶ国については、引き続き本条約による改正前の絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約が適用される。このため、当該国家は、その同意がない限り財政規則に従う義務はない。

  • アフガニスタン・イスラム共和国
  • アルジェリア民主人民共和国
  • バハマ国
  • バングラデシュ人民共和国
  • ベナン共和国
  • ボリビア多民族国
  • カメルーン共和国
  • 中央アフリカ共和国
  • コンゴ共和国
  • コスタリカ共和国
  • コンゴ民主共和国
  • ドミニカ共和国
  • ガンビア共和国
  • ガーナ共和国
  • グアテマラ共和国
  • ギニア共和国
  • ホンジュラス共和国
  • イスラエル国
  • リベリア共和国
  • マラウイ共和国
  • マレーシア
  • モザンビーク共和国
  • ニカラグア共和国
  • フィリピン共和国
  • ポルトガル共和国
  • シンガポール共和国
  • ソマリア連邦共和国
  • スペイン王国
  • スリランカ民主社会主義共和国
  • スーダン共和国
  • タイ王国
  • タンザニア連合共和国
  • ベネズエラ・ボリバル共和国
  • ザンビア共和国

逐条解説

本条約は題名及び本文で構成されている。正文は、絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約と同様に、中国語、英語、フランス語、ロシア語及びスペイン語で作成される。本条約の寄託政府も同様にスイス連邦である。以下、各構成要素について解説する。

本条約の題名は、本条約の内容である絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約第11条3 (a) の字句を改正することを簡潔に示したものである。

本文は、絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約第11条3 (a) の改正規定である。同条約第11条は、同条約の締約国によって構成される締約国会議について規定した条文である。締約国会議は、別段の決定を行わない限り少なくとも2年に一回通常会合と、締約国の3分の1以上が書面により要請する場合に特別会合の二種類あり。締約国は、締約国会議において同条約の事務局の任務の遂行を可能にするために必要な規則を作成すること等ができる。本規定は、同条約の締約国の規則を作成する権利を定めた同条3 (a) の末尾に財政規則を採択することを加える改正を行うものである。財政規則は同条約の事務局の運営等のための経費を確保することを目的としたものである。国際法上、根拠なく締約国に対して財政出動を強制することは主権の侵害に当たる可能性があり、財政出動を強制するには強制される各締約国に対して逐次の同意が必要であった。本改正では、締約国会議で財政規則を採択することができることとすることにより、締約国会議の手続規則に定められた投票方式によって採決された財政規則をもって本条約の締約国の全てを本条約の持つ拘束力をもって財政出動を強制することが可能となる。なお手続規則は会議毎に決定するが、出席した各締約国につき1票ずつの単純過半数の多数決で行われることとされる(例えば本条約発効後初となる第7回締約国会議の作業規則第15規則など)。

脚注


絶滅のおそれのある野生動植物を保護する国際条約は?【世界史】 NewSphere

絶滅動物が存在する理由は人類のせい?すべての命を守るためにできること GREEN NOTE(グリーンノート)|SDGsがすぐわかるニュースメディア

絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約

野生生物種の絶滅

絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律(種の保存法)の一部を改正する法律について(環境省自然環境局野生生物課希少種保全推進室